家族信託とは?その2事例を交えて

こんばんわ。名古屋市中川区の長良行政書士事務所です。

前回に引き続き家族信託のお話です。前回はある意味で家族信託の基本的なお話だけでした。

今回は事例を交えて家族信託の活用方法を考えてみたいと思います。

目次

家族信託の活用事例

家族信託は様々な場面で有効な制度です。今回はその中でも特に活用に適していると思わる事例をご紹介したいと思います。

ご自身の状況と照らし合わせて考えてみて頂ければと思います。

1 親の認知症対策として

家族信託の典型的な活用事例と言えば、親御さんの認知症対策としての活用です。

これは、親御さんご本人からのご相談とお子様からのご相談の2パターンありますが、どちらかと言えばお子様からのご相談が多いように思います。

お一人暮らしのお母様(ご主人様は既に他界)。相続予定者は別居の長男のみ(比較的近所)。財産は自宅と預貯金が少し。

最近、認知症とまでは言えないものの物忘れも激しくなっていて、今後が不安になってきたタイミングでご相談。

将来的には施設への入居を検討しているものの、まだ元気なので今の家に住み続けたい。

預貯金が多少あるものの施設入居後の生活資金のことを考えるとあまり使わない方がいい状態であったため、自宅売却と施設入居のタイミングをあまりずらすことは得策ではなかった。

お母様のギリギリまでご自宅で過ごすという希望を叶えると自宅売却時に意思能力が難しい状況になってしまう可能性があり家族信託を選択。(成年後見制度を利用すると成年後見人の選任と自宅売却のための家庭裁判所の許可が必要になるためかなりの時間を要すると考えられたため。)

2 事業承継対策としての家族信託

続いても典型的な家族信託の活用事例です。いわゆる家族経営の社長さん。後継者候補のお子様がいらっしゃるケースです。

自社株の90%超を保有するお父様。経営は好調で会社は実質ご長男の指揮下にある状況ではありましたが、株式のほとんどをお父様が保有しており、相続対策も講じてこられなかったとのこと。子供は後継者である長男の他に次男、長女の2人がいる。

業績が好調なこともあり株価はやや高め。

家族信託以外に①遺言 ②生前贈与 ③後継者である長男による株式の買取 も考えられたが、①については相続発生までに時間が空くので、認知症になった場合、株主総会の決議ができなくなり経営に支障をきたす恐れがあった。②については、贈与税の問題で断念。③は長男に資金がなく断念。

最後に残った手段として、信託財産を自社株式。お父様を委託者・受益者とし長男を受託者とする家族信託を行うことになった。株主としての議決権を長男に譲りつつ指図権を設定し、お父様の意向を会社に残しながら長男に会社の運営を徐々に任せることに成功。

この場合、万が一、長男に経営能力がなかった時の為に、契約の解除ができるようにしておくと安心です。

2つほど事例をあげてみましたが、その他にも家族信託を活用する事例はいくつも考えられます。共有不動産解消、障害のある子どもがいるケース、相続税対策としての家族信託などです。

家族信託とその他の制度

家族信託とよく比べられる制度に後見制度(成年後見・任意後見)と生前贈与、財産管理委任契約があります。

それぞれの制度と家族信託との違いを見ていきたいと思います。

家族信託と後見制度(成年後見・任意後見)

家族信託と後見制度はどちらが優れているとか劣っているという話ではありません。どちらも本人が認知症等で意思能力がなくなった時に、日常生活や法律行為を手助けするための制度です。

その違いは、効力が発生する時期を考えると分かりやすいです。家族信託は意思能力があるうちに契約をするもので、後見制度は意思能力がなくなった後に効力が発生します。(成年後見制度と任意後見制度でも若干の違いはありますが、ここでは割愛します。)

誤解を恐れずに言えば、家族信託は前もって認知症に備える制度。後見制度は認知症になった後に手助けをする制度。と考えると分かりやすいかもしれません。

その他違いがいくつかあります。

①成年後見制度は家庭裁判所が後見人(本人の手助けをする人)を選任しますが、任意後見制度や家族信託は本人が予め選任しておきます。※ただし、任意後見制度の場合、任意後見監督人という人が後見人を監督する立場で選任されます。

②家族信託では柔軟な財産管理が可能ですが、成年後見制度では柔軟な財産管理はできません。

③後見制度では本人の身上監護が可能ですが、家族信託では本人の身上監護はできません。

④後見制度では制度利用中、月々の費用がかかりますが、家族信託では原則不要です。(任意後見の場合、不要なこともあります。)

以上のような違いです。基本理念である本人保護というところは共通しているですが、その手段が違う。という感じですね。

家族信託と財産管理委任契約

続いて似た制度として家族信託と財産管理委任契約についてお話したいと思います。

本人の財産を受託者が代わりに管理するという意味で非常に似た制度ではありますが、家族信託が本人の意思能力があるうちに契約をして、本人の意思能力に関係なく効力が発生する制度であるのに対し、財産管理委任契約は本人の意思能力があるうちに契約し、本人の意思能力がある時のみ効力が発生する。という違いがあります。

また、不動産や銀行口座で言えば財産管理委任契約は本人の名義のまま受託者が管理しますが、家族信託は(所有権はかわりませんが)登記名義が受託者に変わったり、信託口座を作ったりして表面上名義が変わったり管理先が変わったりします。

家族信託と生前贈与

最後に、混同するような制度ではありませんが、効力として少し似た感じになる家族信託と生前贈与の違いです。

家族信託は名義が受託者に変わったりすることはありますが、所有権等は本人に残っていて、ただその財産を管理する人が変わるだけです。

一方で生前贈与は所有権も受贈者に移るので完全に本人から手離れすることになります。

あわせて、家族信託の場合は贈与税はかかりませんが、生前贈与の場合は金額によっては贈与税がかかることになります。

長良行政書士事務所の家族信託サポート

長良行政書士事務所では家族信託の契約・コンサルティング等トータルにサポートさせて頂きます。最後にサポート費用のご案内をさせて頂きます。

サポート内容費用備考
家族信託契約書作成132,000円(税込)
家族信託契約コンサルティング300,000円~財産額・内容によるため要見積もり
信託管理人・受益者代理人月額22,000円~財産額・内容によるため要見積もり
※その他、信託財産に不動産が含まれる場合は登記費用及び司法書士費用が別途必要になります。

家族信託に限らず、遺言・後見制度・死後事務委任などはお互いを補完し合ったりと一つの手続きでは進まないことも多くあり、なかなか理解が難しい面があります。

困った。分からない。難しい・・・と思われたらまずはご相談ください。具体的なご相談は費用を頂戴しておりますが、簡単なご相談でしたら無料にてご回答させて頂いております。

ご相談・お問い合わせはお気軽にどうぞ。 

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